ITサービス業のプロジェクトマネージメントが難しいわけ

私が教えて頂いているプロジェクトマネージメントの先生方の間では、ITサービス業のプロジェクトマネージメントは10年以上遅れているというのがもっぱらの定説。ドックイヤーとか、35歳定年説などとかくスピードに物言わせて先進的なことをしているようなイメージがあるこの業界なのにどうしてプロジェクトマネージメントの領域の遅れが目立つのだろうか。

ITサービス業における優秀なエンジニア、プロマネというのは凡そスーパーマン(スーパーウーマン)のイメージである。どうスーパーマンなのかと言えば、最近の言葉で言えばアーキテクト、アナリスト、マネーメントの三位一体の人間が優秀なプロマネといわれている。これが、例えばプラントや建設業とは大きく違っているということをよく聞く。プラントの場合、見積、設計、購買(ほとんど全世界で造った物を必要な機能にあわせてスケジュールにあわせて購入していく仕事)、土木、建設と言う具合にそれぞれのスペシャリストを集めて仕事をする。また、アメリカではアナリストの部分である分析や戦略は、ビジネスコンサルタントの領域でその下でITコンサルタントの領域があり、システムはその下流の部分・・・いわゆるシステム化の部分を受け持つことで明確に住み分けされていると聞く。だから、この三位一体のスーパーマン問題は日本のITに限られていることなのかもしれない。

先日も、プラントの場合プロジェクトマネージャの年齢はほとんど30代後半で20代ではまだ見習だと教えて頂いた。ITサービス業の場合には、大体30代後半のエンジニアは少なくとも弊社の場合は3%もいないし、この比率から想像がつくようにほとんどが管理職で現場に行かないものも含まれる。他社の場合、このようなことは無いとは思うが・・・流石に1000人の会社だとしても半分はいるのかしらと思う。人数はいるとしても、現場にいるエンジニアの数と考えるとやはり30%以下ではないのかと思う。大体、業界全体の平均年齢が未だに20代ということがその本質を物語っているような気がする。

そもそも、システムを創るという仕事はとても細かい仕事である上に物作り的な要素と最新の技術トレンドについていかなければならないという宿命とその上、お客様のいろいろな担当者とコミュニケーションを取り、人間関係を円滑に育み、全体的な調和の取れたシステムを創り上げなければならない。それに加えて、一番大切な仕事である納期と品質とコストを守ってシステムを完成させることということを忘れてはならない。しかも、創り上げる間にお客様のビジネスに変更が入るかもしれない。また、決定権はシステムをお使いになるお客様側にある訳なので常にお客様に確認を取りながらの仕事になる。我々ITサービス会社は自分達だけでシステムを創っているということはなくいろいろな確認を取りながら、進捗の報告をしながらお客様と一緒にお客様の望むシステムを構築してということになる。これがプロジェクトの難しいところだと感じる。進捗管理や課題管理、変更管理と言った技術よりつくり手よりの話しもあるが、ステータスフォルダーを管理してコミュニケーションを円滑に取るといった人間的なマネージメント領域もかなり大きな割合で含まれている。
この人間的なマネージメント領域をよく考えて見ると、三位一体以上に大きな問題にぶち当たる。それは、技術とかマネージメントとか言う前のレベル。あたり前のことができる自立した人間でなければならないということ。日本語が正しく使えることとか、挨拶がきちんとできることとか、相手に感謝することとか、一緒に働いている人を思いやることとか・・・それが、企業教育では難しい部分だと思う。企業で教えるということなのかもよく判らないのだが現実は、毎年のように挨拶についてのネタが部門方針や朝礼メールに出て来ている状況。「しつけ」・・・は家庭で行うものではなくて、会社でも行うものもあるから。家庭では教えられないことも沢山あるのだから。社会人としてのイロハを教えることは、企業の責任でもあると考えるほうが今の自分の会社にはあっているように思う。いろいろと大切なことが沢山あって。・・・これは、形の上のことだけでなく仕事に対しての熱意とか、社会人としてのコミュニケーションのありかたとか多岐に渡る。そして、私は考える。本当に最初にみんなに覚えて欲しいことは、会社に入ったら会社はみんなを守り、みんなが幸せになる為にあるということ。そして、「未来を予測する最良の方法はそれを自分で創ること」(The best way to predict the future is to inovent it)というアラン・ケイの言葉は、会社とプロジェクトのどちらにもあてはまる基本的な考え方だと私は思う。

そしてそれは、あなたの生き方にもあてはまることに違いないから・・・。
プロジェクトマネージメントが難しいわけが多少は、わかってもらえただろうか。こたえはひとつじゃないから、ゆっくりと考えてみたらどうだろう。こたえはひとつじゃない・・・でも、採用できる答えは常にひとつで、そのひとつを取る局面ではあらゆる可能性と未来を予測する為に全てを洗い出して分析して議論して判断する必要があるのだ。こたえは、決して最初に思いついたひとつではないことをちゃんと覚えておいてほしい。こういう考え方が「ヒューマンシステム」には必要なことなのだと思う。ITサービス業というのは、形の無いもの、曖昧なものを形にしてしくみを創る仕事だからこそ、こういった人間的なところの管理がKFSに成り得るような気がしている。だからこそ「ヒューマンシステムを目指して進化していきたいと思う。人と人との繋がりを大切にシステムづくりにおもいやりを持って取り組む技術者集団・・・それが今までも、そしてこれからも我々が目指すところなのだ。