「私は、人からスケジュール管理など教わったことなどない・・・」
先日、お客様が弊社に来られていろいろなお話をされているその話しのなかでの発言。この10年にITの技術者がオープン化の波で今までに培ってきたさまざまな基盤技術をどこかに忘れてしまったのではないか・・・という指摘だった。
汎用機の時代、プロジェクトマネージメンとは確固とした技術基盤の上に則って、多少融通の利かないきっかりしたものだった。(正確には私は汎用機は全く知らないのだが・・・UNIXだって、制御用のミニコンだって似たようなものだった。)
それは、コンピュータがとても高価なものだった時代にいろいろな制約条件のなかで「約束をまもる」為に必要な智慧であり、それが徹夜もあたりまえ・・・ストックフォーム(若い人は知らないだろーなぁ)に包まってサーバの後ろで眠った話とか今でもそういった伝説が残っている業界・・・それがITサービス業である。
当時の自分のまわりでも、スケジュール管理なんか3年目以降であればだれだって経験していたような気がするし・・・現に自分も2年目の後半からはスケジュールは自分で書いていたが特に教わったことはなかった。(・・・いや、全員ではなかったかなぁ。そういえば私は先輩の仕様書を書いていたような記憶もある。)ただ、そんなに難しいことではなかったということ。それをお客様も仰っているのだと思う。確かに、1980年代までの開発はもっとわかり易く、技術も安定していたような気がする。
ダウンサイジングといわれて既に久しい、最初にパソコンでクライアントサーバのシステムを使い始めたのは、お客様の一部の進んだ部署の話で、机に一人1台のパソコンと言われるようになったのは・・・ほんの1998年以降の話である。
2000年を境にして急激な業務革新の中、ダウンサイジングの領域に加えて、インターネットを業務に取り入れて情報を共有し戦略的なIT化を進めるということが、先進的な企業で取り入れられることになった。もうそれから6年も経っている。今では、インターネットの特徴を活かして、アジアの生産拠点や場合によっては全世界を繋ぐシステムだってそんなに夢のような話しには聞こえない。
基幹業務を取り仕切っていた人達は、コボラーとか呼ばれてクライアントサーバやWEBの時代・・・この10年ほどの間には世代更新が起こった。しかし、コボラーは、きちんと仕様をまとめて調整をして・・・という現在のプロジェクトマネージメントスキルやお客様の仕様や運用を理解するといったスキルは高かった。なにより、大手企業のシステム部の若い人達はそういうソフト会社の人間と一緒に研修に行ったり、同じようにプロジェクトに所属して開発現場での密な人間関係を構築していることが多かった。なにより、仕事の内容が、入力して、計算して、帳票を出すというようなシンプルなものであったこともあるとは思う。
いくつかの理由は、当時のコンピュータの市場状況が現在と違うことにある。当時、コンピュータは現在と比較にならないほど高価なもので私が新人の時代には、まだマシンタイムということが本当にあった。・・・今は、ほとんどの人はこんな言葉すら知らないのかもしれない。制約が多ければ、マネージメントが必要になる。また、最近の傾向として、システムが複雑化している為に不確実性が高まりここでも、プロジェクトマネージメントが必要とされているのではないか・・・そんなことを考える。システムがビジネスの基盤であるものも数多く存在する。つまり、我々の仕事の領域は、どんどんと上流工程であるビジネスの領域に近づいているということなのだ。ビジネスの創業支援が出来るソフト会社・・・このサービス領域を我々の会社は得意としているのだが・・・それは、まだ少ない。
一方で、ダウンサイジングで創られたシステムを統合して企業の情報システムに組み込むような仕事も増えている。そして、このような仕事の大きな問題は、統合的なドキュメントが不足していたりソースには手を入れたがドキュメントが置き去りにされたり・・・といったことがよく言われる。しかし、これはコボルやRPGの世界でも全く同じで、取り立てて新しく言われたことではない。その結果、既に15年前の時点でさえシステムの40%は使われていないという調査報告書が出ているぐらいだ。ということは、失われた10年が奪ったものは・・・管理能力なのか?と考え込んでしまうのだが、ひとつ重要な事としては、システムがいろいろなところに使われてIT経営が進んだ結果、複雑なシステムが増えているという現実もあるように思う。それは、WEB技術の特徴の1つでもあると思うのだが、いろいろなシステムを連携して情報を引き出す蜘蛛の巣は、今ではWEBの向こう側まで広くその技術の適応先を延ばしている。
複雑なものだから、計画も立て難いし管理も難しいから昔よりもできる人が不足しているのかもしれない・・・つまり、こういうところに会社を差別化する為のキーワードが落ちているのかもしれない。複雑なシステムだからこそ、これから益々プロジェクト管理というものが重要度を増すことだろう。
そのはじめの一歩は、まず自己管理ということかもしれない。自分の健康管理、自分のスケジュール管理・・・今日の仕事の予定はあるか?そんな足もとから確認してみたらどうだろうか。