ITサービス業は、どんどんものつくりの仕事からサービスを売る仕事へとシフトしていることは、常々感じることである。先日も、お客様の打ち合わせで弊社のIマネージャがさらっと構成を説明した。その後にエレベータホールで2人の間でこんな会話になった。
私「どうしてA技術を採用しなかったの?B技術より新しいしお客様の前回の指摘は問題が違っていたんじゃなかったの?」
I・マネージャ「それは理解していますし、説明もしていますがどうしてもB技術にお客様が拘られましたので、また、A技術の場合にどうしてもポートを空ける必要があります。わかってます。それは大きな問題とは思いませんがなによりも、お客さんが納得される方式を採用したいと思ったのです。」
なるほど、たしかにA技術とB技術だけに拘るのであればAなのだが、バランサーを内と外に配して最強のバランシィングを施しているのだから、問題は起こらないに違いない。正しい状況判断だ。いつもギリギリの予算のシステムばかりで、パフォーマンスを技術だのみで乗り切ることが多い他のプロジェクトとは訳が違うのか・・・。いつから、こんな腹芸ができる人になったのだろう。まだまだ若いIマネージャがにっこりと微笑んだ。本当に若い線の細いスマートな彼にこんなコンサルタントの秘密を教えてもらうとは・・・ちょっと感動した。まかせきりだったけど、本当に期待どおりに(それ以上)よくやってくれている。どこでこんな技を仕入れてくるのかしら、○○さんかなぁっと彼と一緒に仕事をすることが多いお客様でもあるマネージャの顔が浮かんだ。昔、「君は、技術で勝っても勝負で負けてる・・・」ってよく叱られたことを思い出す。
この間ある国内銀行系大手のコンサルタント会社のコンサルタントのお話を伺う機会があった。その方は、大学卒業後ホワイトカラーとブルーカラーという別の組織を持つメーカーには入りたくないということで百貨店に就職された。経済学部卒なのになぜか給与計算や人事畑を歩くことになり、百貨店系列の関連会社の給与や人事面の企画、労使関係の調整などのコンサルティングもおこなうようになっていた。そのなかで、新聞広告の○○○総研コンサルタント募集という広告に惹かれ現在の職場に転職された。その後、人事、総務、財務、経理、システム系と言われるインターナルな分野と戦略、マーケティングといったエクスターナルな分野の両方の経験を積まれて現在に至っているということ。
なにに驚いたかといえば、最初のご挨拶だった。
「みなさんの抱かれる「コンサルタント」のイメージ、その華麗な、派手なイメージには、私はあまり合っていないかと思います。実は、私は昨日から帰っておりませんで一睡もしておりません。徹夜で仕事をしていました。本日は、午前中は、千葉のクライアントへ行き、午後は銀座、それから(18:30~)ここでお話をして、終わり次第、会社に戻って部下の人事評価を行います。昨夜から寝てないというお話をしましたが流石にそのままですと気持ちが悪いので常に用意してある、置きシャツ・置きくつした、置き下着を持って秋葉原の玉の湯でお風呂を浴びてからクライアントに行きました。」(ITは3Kとか聞きますが、コンサルタントも大変そうですよね。この方は絶対間違いなく40歳以上だった)
お話のなかで、無形のものを売る難しさについてのお話とか、様々なお話をして頂きとても勉強になった。その中から幾つかのお話を抜粋してお話したいと思う。
○ヒアリングとインタビューの違いについて
fact(事実)を集める為にインタビュー調査を行うのだが、インタビューとヒアリングの違いは、聞くほうがシナリオを持って聞くのがインタビューであるということ。お客様側にプロジェクトを作ってもらってミーティングを実施する。ただ、ヒアリングを重ねても事実にはたどりつかない。(・・・仮説を立ててこちらがリードしてインタビューするということね。P2Mでも習ってるよね。納得。)
○コンサルタントの意識すること
胡散臭さ・・・総○屋の定款には必ずコンサルタントと入っているという話から、そういう胡散臭さを払拭する為にはどうするかを意識する必要がある。メソトロジーはきれいだけどこだわらない。外見には、こだわる必要がある。(相手の会社の雰囲気にあわせる。広告代理店ならブランドスーツ・工場ならグレーの地味めのスーツと使い分けが必要) ロジックの首尾一貫性が必要である。そういうことで、信頼を得るということ。
今日この工場に人事コンサルティングに来た。例えばコンサルフィーが10万円かかるとして、100人の工員に10本づつ焼き鳥をもって帰す以上の成果を上げられているだろうか?そんな風に自問する。こういった気持ちが大切だとその方は仰った。(正直、涙が出てくるぐらい共感を覚えた)
ある人から、「人事コンサルティングで経営側と現場の意見が違う場合・・・クライアントである経営を優先するのですよね。」という質問を受けた時の回答にまた、とても感動した。「私は・・・確かに賃下げもしたことはありますが、働く人に最善の方法を提案して来たつもりです。人を幸せにする人事組織をつくる。その志を無くさないようにしています」と。おそらくその人は、働く人あっての企業ですからというような意味を含めて仰ったのだと思う。経営の本質として人事という分野があり、その方面の経営を熟知されている方なのだと感じた。
その先生も、私が教えていただいているP2Mのコンサルタントの先生も、顧客満足度把握術は、常にちょっと上を行くことと教えてくださった。Iマネージャの判断は、そういう意味でも正しくて納得のいくものだったといえる。彼は、パフォーマンスまで考慮にいれてB案を採用したのだから。こういうことも、ちゃんとした経験値がきちんと彼に蓄えられているからなのだなぁと思った。地アタマのよさ+経験値+志・・・これがスペシャリストの成功する為に必要なことなのだね。いや、サービスという無形のものを買って頂くことを生業としているものにとって必要なことなのだと強く思った。
地アタマで勝負する人も、経験値で勝負する人も今週もよろしくお願いします。